2008年 第1回〈体験ツール研究会〉の報告

2021年2月20日土曜日

【2】アーカイブ 【6】鑑賞ツール

第1回〈体験ツール研究会〉の報告

日時2008年4月27日(土曜日)
  1330分~
会場栃木県立美術館 普及分館ラウンジ

参加大学関係者  1名
  高等学校教員 1名
  小学校教員  1名
  美術館学芸員 4名
  合計     7名

 2008(平成20)年4月27日、第1回〈体験ツール研究会〉が栃木県立美術館の普及分館ラウンジを会場に開催されました。
 今回は、前年度から引き継いだ課題として、「投げかけキャプション」+絵葉書の試作品についてのモニタリング調査の報告が行なわれ、これからの研究の方向性などについて討議しました。

【今回の議題】

「投げかけキャプション」+絵葉書の試作品についてのモニタリング調査の報告1

御幸小学校では、図工室の目立つ場所に掲示した。

中学年と高学年の児童の食いつきがよかった。

「これはなに?」と興味を持って見たり、言葉に注目していた。

しかし、教師がいないと、内容にまで踏み込むのはむずかしい。

掲示してすぐのときのインパクトは強いが、だんだん見慣れてしまい、次第に教室と同化してしまう。

対話型鑑賞につなぐきっかけとしては有効ではないか。

小学生には具象画のほうがよいかもしれない。

(以上、御幸小学校 福田雅子氏の報告)

「投げかけキャプション」+絵葉書の試作品についてのモニタリング調査の報告2

小杉放菴記念日光美術館で開催した〈出会いの美術〉展に来館した中学生に、栃木県立美術館の島氏が作成した、アンケート形式のワークシートに記入してもらった。

一枚の紙に、12の質問が記されたワークシートを配布し、好きな絵を選んだ上で、その絵に対する質問も選び、答えてもらう方法で行なわれた。

どのような質問が選ばれたかは、別紙の集計を参照のこと。

中学生になると、抽象画にも反応しているようだった。

(以上、小杉放菴記念日光美術館 鈴木日和氏の報告)



モニタリング調査に使用した「投げかけキャプション」+絵葉書の試作品

今年度の研究会の方向性について

知識を与えるためだけではなく、「実感」や「体験」ができるツールができればよいと思う。

昨年度までの議論も、そういう方向性にまとまってきていたのではないか。

そのような方向性を、今年度の研究会の名称にも反映させたい。

そのまま、「実感ツール研究会」、「体験ツール研究会」などとしてもよいだろうが、「わくわくツール」という名称もおもしろいかも……

やはり、「体験ツール」という名称が、いちばん、わかりやすく、かつ、実状にも近いのではないか。

今年度の定期研究会の名称は、「体験ツール研究会」と決まる。

昨年度から行なってきた議論の延長線上に、「体験」という言葉を意識して、ツールを考える。

以前から検討してきた、「触れるツール」なども、改めて「体験」という位置づけから捉え直してみてはどうか。

「触る」と言った場合は、画面(テクスチャー)を触ることと、素材(支持体)を触ることとの、2つが考えられる。

そのどちらも、体験できた方がよい。

そのためには、やはり、以前から話題になっていた、六面体に、それぞれ別の素材を貼付したツールを検討してはどうか。

主に木炭デッサンのモティーフにする用途なのであろうが、画材として、六面体(立方体)を自作できるキットが市販されていた。これを利用すれば、別に、いくつかの素材を用意するだけで、「触れるキット」ができる。

実作者の立場から言えば、素材をただ触るだけのことにどれだけの意味があるのか、疑問に思う部分もある。とくに、素材ごとの境界をどのように処理するかは重要だ。

まず、子どもたちに絵画鑑賞への関心を持ってもらうため、導入に役立つ、ゲーム性のある「わくわくツール」や「つかみツール」というべきものも継続して考えていきたい。

今年度も、美術館と学校との連携については、引き続き取り組んでいく。

今年度は総会が開催されるが、それに合わせて、なにか美術鑑賞についての催しを考えなければならない。

8月であれば、「InSEA 国際美術教育学会世界大会2008in大阪」に出席するために来日されるマイケル・パーソンズ博士(オハイオ州立大学名誉教授・研究分野は美術における理解や評価、認知発達、統合カリキュラムなど、多岐にわたる)をゲストに迎えた会を実施することができる。5月末か6月初めに、総会準備のための役員会を開かなければならないが、そこで検討してもらいたい。


次回の研究会

次回は、5月24日(土)に宇都宮美術館を会場に開催し、今回の研究会で提起された問題を、さらに深めて討議する。

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©2008 ART NET TOCHIGI

第2回〈体験ツール研究会〉の報告

日時2008年5月24日(土曜日)
  1330分~
会場宇都宮美術館 会議室/展示室

参加大学関係者  1名
  高等学校教員 1名
  中学校教員  1名
  美術館学芸員 3名
  合計     6名

 2008(平成20)年5月24日、第2回〈体験ツール研究会〉が、宇都宮美術館を会場に開催されました。
 今回は、宇都宮美術館から「あーとネット・とちぎ」へ依頼があり、その内容について話し合ったのち、研究会で作成するツールの具体的な問題について協議しました。

【今回の議題】

宇都宮美術館から「あーとネット・とちぎ」へのお願い

平成20年度の文化庁芸術拠点形成事業に採択された「Re+Collectionsプロジェクト」において、作品鑑賞のための教材開発と、鑑賞ワークショップ・ファシリテーターをお願いしたい。

プロジェクトの概要は以下の通り。

……宇都宮市内の小・中学校が所蔵する美術工芸等の作品を、宇都宮美術館の学芸員が中心となって、協力スタッフ(学生と社会人で構成)とともに発掘・調査する。

……調査した作品をデータベース化する。

……調査した作品から約30点を選び、希望校1校を会場として展覧会を開催する。

……調査した作品をもとに作品を鑑賞するための教材を開発し、展覧会の会場において、ワークショップを行なう。

……データベースと教材は、CD-ROMにして、市内の小・中学校に配布する。

「あーとネット・とちぎ」の皆さんには、鑑賞を助けるための教材の企画開発と、鑑賞ワークショップのファシリテーターをお願いしたい。

鑑賞を助ける教材は、PDFファイルなどにデータ化できるものが望ましい。

「投げかけキャプション」「わくわくツール」などを想定している。

鑑賞を助ける教材は、11月から1月にかけて企画し、2月に試作品を完成させる。3月には、完成番を作り上げる。

また、展覧会の会場で、上記の教材を用いたワークショップを、一般の人と教員向けに開催するので、その講師役をお願いしたい。

ワークショップの期日は、2009年の2月11日(日)頃を予定している。

参加者からの助言として

県立学校の所蔵作品で、同様の事例があった。

日光市でも、公共施設や市立学校の所蔵作品の調査を行なっており、やはり、今年度の展覧会で一部を紹介する予定だ。

大田原市では、市が所蔵する彫刻作品を学校に置いている。

「体験ツール」の参考として

チャック・マーフィーによる、しかけ絵本『びっくりいろあそび』(大日本絵画)が、「触れるツール」や「わくわく(つかみ)ツール」の参考になるのではないか。

現物が提示され、検分を行なう。

シンプルな色面から始まるデザインが良い。

ポップアップのしかけを作るのは、「平面」から「立体」を起こす作業とは、また少し違って、「見え方」を考えさせることになる。

ポップアップの作り方のガイドブックもある。

「触れるツール」について

「触れるツール」の当初のねらいは、平面上のイメージと実際の立体との関係性を把握できる能力を養うことにあった。

この能力は、美術だけでなく、さまざまな分野で必要とされる、人間の本質的な能力の一つではないか。

数学の分野でも、東海大学の秋山仁氏が立体教具を用いて、話題になっている。

実際にどのようなアイデアがあるかというと非常にむずかしいが、これまでの議論を参考に、これからも、どうにか検討していきたい。

「触れるツール」では、立体を把握するためのものとは別に、素材を理解するという目的のものもある。

その場合、まずは、日本画と油彩画の大きな違いなど、基本的なところを押さえたい。

「触れるツール」を考えるならば、純粋な素材としてのテクスチャーと、作家の意図が介在したマチエールとの違いをしっかり踏まえておかなければいけないのではないか。

実作者の立場からは、作家の意図的なマチエール(絵肌)を理解してもらいたい。

作家は、いろいろとマチエールについて工夫している。

しかし、純粋に絵を見る側からすると、そのマチエールを理解することが、どこまで、作品そのものへの理解につながるかという点で議論が必要だろう。

当面のねらいとしては、絵を見るときに素材へも意識を向けてもらうことでよいのではないか。

多くの人は、日本画の顔料が、どんな感じで紙に定着しているかがわからない。専門家でも、日本画の画面に触れる機会は滅多にないはずだ。

絹に薄く描かれた日本画と紙に厚く塗られた日本画や、細密に描かれてニスで滑らかに画面を仕上げられた油彩画と荒い筆触を生かした油彩画などの違いを、触覚的に理解できれば、それだけでおもしろいのではないか。

マチエールの違いを理解するためにも、まずは、テクスチャーの違いを知っていた方がよいだろう。

「あーとネット・とちぎ」ウェブサイト上のフリー素材集について

ウェブサイトに掲載している[使える言の葉集]の言葉を、対象とする学齢で分類すると、より使いやすくなるのではないか。

その他の素材として、これからの若手イラストレーターに、ワークシートにそのまま使用できるようなイラストを描いてもらって、ウェブサイトに掲載できないだろうか。協力してくれるイラストレーターには、準パートナー的な扱いで、自らの広告バナーを無料で出してもらうようにすれば、希望者はいると思われる。

ウェブサイトにある「言葉」と「イラスト」だけで、簡単なワークシートが作成できるようなると、「あーとネット・とちぎ」のウェブサイトの実用性は大きく高まる。

現在、有料で広告バナーを出してもらっているパートナー企業にも、クレジットだけは表記した上で自由に使用してもらえば、これから売り出そうとするイラストレーターにもメリットがあるのではないか。

その他、写真なども含めて「使える素材集」を増やしていくことを役員会でも検討してもらう。

総会について

前回の研究会で提案のあった、総会に合わせてマイケル・パーソンズさんを囲む会を開催する件について、計画を進めたい。

8月3日(日)に総会を開催することにできれば先方の都合にも適う。

会場は、宇都宮美術館さんにお願いしたい。

事務局として、通訳の方への謝金などについて検討する。


次回の研究会

次回は、6月14日(土)に栃木県立美術館を会場とし、役員会と懇親会に先だって開催する。カンヴァスや絵具などの素材を持ち寄り、実際にどのようなツールが作成できるか試しながら、素材について考えてみたい。研究会でも用意するが、可能であれば、各自が手持ちの素材を持参することとする。

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第3回〈体験ツール研究会〉の報告

日時2008年6月14日(土曜日)
  1330分~
会場栃木県立美術館 普及分館ラウンジ

参加大学関係者  2名
  高等学校教員 4名
  中学校教員  1名
  小学校教員  1名
  美術館学芸員 4名
  合計     12

 2008(平成20)年6月14日、第3回〈体験ツール研究会〉が栃木県立美術館の普及分館ラウンジを会場に開催されました。
 今回は、「触れるツール」の試作のための具体的な手順について協議し、実際の制作へ向けての役割の分担を決めました。

【今回の議題】

「触れるツール」の素材

前回の協議に基づき、各自で用意した素材(紙やカンヴァス、絵具など)を持ち寄って検討を行なった。



用意された紙やカンヴァス、絵具

栃木県立美術館、宇都宮美術館、小杉放菴紀念日光美術館の3館では、通常の普及活動用に、いくつかの紙・画材類をすでに用意していた。

各自が用意した素材についての説明。

「触れるツール」の参考

さくら清修高等学校の有坂先生が、これまでの授業で実践してきた、「素材についての資料」(生徒たちに制作させたもの)の説明を受け、それらについて話し合った。



「素材についての資料」

純粋に、見ていておもしろい内容だ。

自分の授業でも使ってみたい。

そのまま、作品として展示できるようなものもある。

この資料は、素材としてより、表現そのものとしての可能性を追求した方がよいのではないか。

「触れるツール」の準備

「触れるツール」の具体的な制作方法についての検討した。

とりあえず、手近にあった木製の立方体(六面体)に、各種の素材を貼り付けてみる。

木製の六面体は18cmの立方体なので、貼り付ける素材は、おおよそ10cm四方の大きさのものを用意する。

貼り付ける素材としては、とりあえず、最も代表的な画材である、日本画、油彩画、水彩・アクリルの3種類を基本に考える。

この3種類の画材を、日本画の顔料を絹に塗ったものと紙に塗ったもの、油絵具を薄く塗ったものと厚く筆触を目立つように塗ったもの、透明水彩と不透明水彩などと、さらに2つに分ければ、ちょうど、6種類になって、立法体の全ての面を使える。

それぞれの画材の試作担当者が下記の通りに決まった。

日本画    :有坂先生(県立さくら清修高等学校)

油彩     :野原先生(県立鹿沼高等学校)

水彩・アクリル:鈴木先生(作新学院高等学校)

素材には、何色を使ったらよいのか?

油彩の場合には、溶き油の違いも考慮した方がよいのではないか。

今後のことを考えると、あまり高い材料は使わない方がよい。

ベンガラだったら、安価で手にはいる。

ベンガラの粉末を一括で入手し、それぞれ、膠や油やアクリルのメディウムで溶いて使用すれば、日本画、油彩画、水彩・アクリル画の素材になる。

ベンガラという同じ顔料を共通で使用すれば、メディウムの違いが、より理解しやすいかもしれない。

絵画の素材は、子どもたちだけでなく、大人にも興味を示す人がいるので、美術作品に関心を惹くための「つかみツール」としても活用できるものにしたい。

総会、講演会および懇談会について

総会に合わせて、2008(平成20)年8月3日の1330分から、マイケル・パーソンズ氏による講演会「鑑賞教育の意義」(通訳付き)を開催する。

会場は、宇都宮美術館の講義室を確保できた。

貴重な機会なので、ぜひ、一般の参加者も歓迎したい。

欠員となっていた「あーとネット・とちぎ」のもう一人の副会長には、宇都宮美術館の学芸課長・浜崎礼二氏に内諾を得たので、新しい役員人事案に含めて総会で提案したい。また、同じく欠員となっている、小学校部会の幹事については、栃木県小学校教育研究会図画工作部会の部会長・小林先生にお願いして探していただく。


次回の研究会

次回は、7月19日(土)に栃木県立美術館を会場とし、今回、先生方に依頼した素材を集めて実際に試作品を制作してみる。また、事務局を中心に、総会の準備を進めるための協議も行ないたい。

 

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第4回〈体験ツール研究会〉の報告

日時2008年7月19日(土曜日)
  1330分~
会場栃木県立美術館 普及分館ラウンジ

参加大学関係者  2名
  高等学校教員 2名
  中学校教員  1名
  美術館学芸員 4名
  合計     9名

 2008(平成20)年7月19日、第4回〈体験ツール研究会〉が栃木県立美術館の普及分館ラウンジを会場に開催されました。
 今回は、前回の研究会で分担を決めた「触れるツール」の素材が、一通り揃ったので、これらについて検分し、最終的に詰めていく協議を行ないました。

【今回の議題】

「触れるツール」について

前回の研究会で分担を決めた「触れるツール」の素材が、一通り揃ってきた。



「触れるツール」の素材としての紙やカンヴァス

「触れるツール」を実際に作るためには、その目的を考えて、使用例を想定しなければいけない。

触れるツールの製作の意図するところを、もう一度、確認する。

制作するツールは、絵画のマチエールの可能性について体験者に考えさせるようなものにしなければいけないのではないか。

一つの素材からたくさんの表現のバリエーションが生まれる可能性について理解させるものにつなげたい。

最終的な目標がそうであったとしても、とりあえずは、素材の違いを触覚的に理解することから始めるべきだろう。

まず、最も基本的な素材の違いを触覚的に理解するツールを作ることができれば、そこから、マチエールの可能性を探るツールに展開させることもできるのではないか。

一つのツールが、いろいろと発展していく可能性を大事にしたい。

ここまで議論されてきた二つの方向性は、「鑑賞を促す――触れるツール」と「制作を促す――触れるツール」との違いとして整理できる。

「触れるツール」の当初のねらいである、平面上のイメージと実際の立体との関係性を把握できる能力の涵養についても留意しておきたい。

とにかく、次回の研究会までに、今回の材料を用いたツールを実際に作ってみる。そうしたら、いろいろと、また、問題点もはっきりとしてくるだろう。

……小杉放菴記念日光美術館において制作。

総会について

8月の研究会は総会に併せて開催される講演会および懇談会にあてるので、マイケル・パーソンズさんのお話しをよく聞いて、今後の研究会にも役立てる。


次回の研究会

8月3日(日)には、総会、講演会および懇談会が開催されるので、8月の研究会は、それらの集まりで代替し、今回の続きは、9月13日(土)に栃木県立美術館を会場として開催したい。そのときまでには、「触れるツール」の、一応の完成形を提示できるようにしておくとともに、絵具を作るワークショップなどについても検討する。

第5回〈体験ツール研究会〉の報告

日時2008年9月13日(土曜日)
  1300分~
会場栃木県立美術館 展示室/普及分館ラウンジ

参加一般の方   1名
  高等学校教員 2名
  中学校教員  3名
  小学校教員  4名
  美術館学芸員 3名
  合計     13

 2008(平成20)年9月13日、第5回〈体験ツール研究会〉が栃木県立美術館の展示室と普及分館ラウンジを会場に開催されました。
 今回は、栃木県立美術館による〈教師のための土曜講座〉と連携し、石や土から絵具をつくる体験をしたあと、そこから、改めて鑑賞について考えました。

【今回の議題】

絵具を手作りする体験

当日は、1300分に栃木県立美術館の常設展示室受付へ集合して、まず、連絡事項の伝達や参加者の自己紹介、ゲストである作新学院高等学校美術デザイン科教諭・鈴木武雄氏(あーとネット・とちぎ幹事)の紹介などを行なった。

1320分から20分間、常設展示室において、コレクション企画II〈出合いに始まるものがたり〉展を観覧し、普及分館へ移動して休憩。

1400分から10分間、鑑賞の契機となる体験ツールの考え方について説明をしたあと、ゲストの鈴木武雄氏の指導により、1520分まで、実際に、体験ツールとしての絵具の手作りを体験した。

楽しくスタート

……硬い石、大きい石は、まず、ハンマーで叩いて割ります。

硬いものは、まず、ハンマーで

……割れた石をヤスリで削って、さらに細かくします。

ヤスリで削って細かくする

……ラピスラズリ(瑠璃)も削ると絵具になります。

ラピスラズリも惜しげなく

……土は乳鉢で丹念にすり潰します。

土もすり潰せば立派な絵具です

……参加者の皆さんは硬い石を削ってゆくうち、次第に熱中してきました。

だんだん燃えてきます

……細かくなった石の粉末に膠を混ぜます

膠を混ぜて

……手作り絵具の完


出来上がった絵具

……手でも描けます。

手作り絵具で、手で描く

……参加者のみなさんも楽しそうです。

みんな一緒に

材料

黄色

鹿沼土

うす茶

煉瓦

うす灰

御影石

灰色

黒御影石

大理石

ラピスラズリ

片付けのあと、1530分から30分間、実習の感想や意見を交換し、学校と美術館との連携の可能性などについて、参加者で話し合った。

いくつかの連絡と全体のまとめを行なってから、アンケートに記入してもらって終了。

体験ツールとしての手作り絵具

近世の日本の絵画などは、なにか鑑賞のための糸口がないと、立ち止まりもせずに通過してしまいがちな分野である。

絵具を作る体験をすることは、そのような、敬遠されがちな分野でも、興味を持って鑑賞を行なうためのよい契機となるのではないか。


次回の研究会

次回は、1019日(日)に栃木県立美術館を会場として、前回の研究会で協議した試作品を完成させて持ち寄り、詳細に検討する。

 

第6回〈体験ツール研究会〉の報告

日時20081019日(日曜日)
  1000分~
会場栃木県立美術館 集会室

参加一般の方   1名
  高等学校教員 1名
  美術館学芸員 4名
  合計     6名

 2008(平成20)年1019日、第6回〈体験ツール研究会〉が栃木県立美術館の集会室を会場に開催されました。
 今回は、とりあえず試作品が完成した「触れるツール」を持参して、実際に現物を手にしながら、その詳細について検証しました。

【今回の議題】

試作された「触れるツール」について1

試作品が完成した「触れるツール」

完成した試作品は、木の板で作った立方体の表面を白いジェッソで整え、その上に紙や絹、カンヴァスなどをペーパーセメントで貼り付けたもの。

立方体の1辺の長さは18cm

試作品の立方体に貼った紙、絹、カンヴァスは、前々回の研究会までに作成されていた「触れるツール」のための素材で、それぞれ、ベンガラを膠や油、アクリルと水で溶いた絵具が塗られている。

同一のベンガラの粉末を、膠で溶いたものを日本画の絵具、油で溶いたものを油絵具、アクリルと水で溶いたものを水彩絵具に対応させた。

上記の3つの絵具を、基底材や塗り方のちがいで、さらに2つに分け、以下のとおり、6種類の素材にして立方体に貼り付けた。

顕色材
(原料)

展色材
(溶剤)

基底材
(媒体)

備考

ベンガラ

膠水

絹本・着色

膠水

紙本・着色

カンヴァス

厚塗り油彩

カンヴァス

薄塗り油彩

アクリル樹脂

透明水彩

アクリル樹脂

不透明水彩

試作された「触れるツール」について2

箱が小さすぎるとわかりにくいので、触覚で感じるためには、これくらいの大きさは必要となる。

しかし、この形状だと、置いておくだけでは使用しにくい。

紐で吊るせるようにしたらどうだろうか。

使い方の説明や、キャプションなどを付けてみることが必要ではないか。

さらにテクスチャーがわかりやすいツールも必要。

ベンガラという同一の素材に拘らず、テクスチャーの特徴が、より明確になる市販の絵具を使った方がよいのではないか。

展示することで、絵具や画材の質感やテクスチャーについての理解を促すという目的を考えると、系統樹=樹形図のような形もよいかもしれない。

原点に戻り、立体であるということを再確認する必要も。

作家の渡辺惠美子さんに、「針金の樹」の作り方を教えてもらって、立体的な樹形図としたらどうだろうか。


次回の研究会

次回は、1122日(土)に栃木県立美術館を会場として開催し、今回の試作品の内容を踏まえた上で、さらに、「触れるツール」の新たなアイデアを持ち寄るようにする。

 

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第7回〈体験ツール研究会〉の報告

日時20081122日(土曜日)
  1000分~
会場栃木県立美術館 集会室

参加一般の方   1名
  高等学校教員 1名
  美術館学芸員 4名
  合計     6名

 2008(平成20)年1122日、第7回〈体験ツール研究会〉が栃木県立美術館の集会室を会場に開催されました。
 今回は、前回の研究会で提示された「触れるツール」の内容を踏まえて、各々が新たに考えてきたいくつかのアイデアについて検討しました。

【今回の議題】

「触れるツール」の新しいアイデア1


展示台型「触れるツール」

栃木県立美術館の島氏から、展示台型「触れるツール」の概念模型が提案された。

中心の三角形の部分に、ベンガラなどの顕色材(原料)を置き、そこから三方に伸びる四角形の根元の部分のそれぞれに、展色材としての膠、リンシード、アラビアゴムなど、溶剤を配置する。

さらに、三方に伸びた四角形の先端には、紙や絹、カンヴァスなどの基底材(媒体)に原料を溶剤で溶いて塗ったものを貼って、原料と溶剤と媒体の関係性を一目で理解できるようにするとともに、それぞれを実際に触ることも可能にする。


アイデア・スケッチ

「触れるツール」の新しいアイデア2

もう一つ、島氏からは、おみくじ型「触れるツール」も提案された。

普通の割り箸の先端の一方に、「触れるツール」のための素材を貼り付けて作成する。

おみくじのように、「触れるツール」のための素材を貼り付けた先端部分を箱に入れて見えないようにし、外に出ているもう一方の先端を選んで引く。


おみくじ型「触れるツール」

美術作品の鑑賞に関心を持ってもらうための「つかみツール」としての活用も考える。

次回の研究会までに、おみくじ型「触れるツール」と、前回の研究会で提案された立体的な樹形図型「触れるツール」を、ぞれぞれ、小杉放菴紀念日光美術館(田中)と、栃木県立美術館(島)が作成することとする。





いろんなアイデアの検討中

宇都宮美術館から「あーとネット・とちぎ」へのお願い

第2回〈体験ツール研究会〉で、宇都宮美術館から「あーとネット・とちぎ」に対して協力を依頼された「小中学生による学校収蔵品再発見プロジェクト Re+Collections」の事業の進展に関する報告があり、改めて、協力の内容が検討された。

夏の間に、宇都宮市内の小中学校60校の悉皆調査を行ない、計 378点の所蔵作品を確認した。

ジャンル

点数

作者

日本画

48

島多訥郎、五十嵐勝雲、田村耕二など

油彩・平面

140

谷田部康幸、杉山吉伸、澤村三郎など

水彩・素描

32

益子洋、高橋敏行、鈴木正行など

版画

31

内田進久、坂本好一、坂本富男など

彫刻・立体

54

佐伯留守夫、日原公大など

陶壁画

32

米陀寛、藤原郁三、佐伯守美など

工芸

26

平川晋吾、吉田喜彦など

14

癸生川天遊など

グラフィック

1点

ちばてつや

各学校の所蔵作品を「鑑賞」の授業などで活用するため、汎用性の高いツールを作る。

鑑賞のためのツールの形態は、PDFのデータにしてCD-ROMで配布できることが前提となる。

鑑賞のためのツールは、学校で使用されることを念頭に置き、「評価」の方法についても、できるだけ指標を示す。

これまでの研究会の成果を生かし、以下のような内容でツールを作成したい。

ワークシート

1.テンプレート・タイプ

2.巻物のような、手を動かすタイプ

投げかけキャプション

1.作品の近くに掲示するタイプ

2.絵葉書で差し替えできるタイプ

体験ツール、素材ツールをどうするか?

ツールが出来上がったら、学校展覧会の中で、それらを使用した鑑賞ワークショップを開催するので、ファシリテーターを研究会のメンバーにお願いしたい。

今後のスケジュールとしては、これまでの研究会で提案されたアイデアを実現化・量産化する方向でデザイナーとの協議に入り、3月に開催する鑑賞ワークショップにおいて、実際の作品の前でワークシートに取り組んでもらい、改善点や授業での運用方法について話し合う。その後、話し合いの内容を踏まえてデザイナーと修正作業を行ない、4月に、PDFファイルにしたものをCD-ROMに収録して配布する。


次回の研究会

次回は、年明けの1月9日(金)に、「あーとネット・とちぎ」全体の懇親会と一緒に開催することとし、今回の研究会でアイデアとして提示された「触れるツール」を実際に作成して持ち寄ることとした。

第8回〈体験ツール研究会〉の報告

日時2009年1月9日(金曜日)
  1815分~
会場栃木県立美術館 会議室

参加小学校教員  3名
  中学校教員  1名
  高等学校教員 3名
  美術館学芸員 7名
  合計     14

 2009(平成21)年1月9日、第8回〈体験ツール研究会〉が栃木県立美術館の会議室を会場に開催されました。
 今回は「あーとネット・とちぎ」全体の懇親会と同時に開催されたため、〈体験ツール研究会〉の内容としては、前々回の研究会から提案されていて、前回の研究会のあとに制作された、立体的な樹形図型「触れるツール」についての紹介だけで終わりました。

【今回の議題】

立体的な樹形図型「触れるツール」の紹介

立体的な樹形図型「触れるツール」

立体的な樹形図型「触れるツール」

作家の渡辺惠美子さんによる「針金の樹」を応用したもの。

今回の試作品は、渡辺惠美子さんに作り方を教えてもらいながら、栃木県立美術館の島氏が制作した。

素材は、ホームセンターなどで購入できるアルミ製の針金。

使用したアルミ製の針金は2巻き分=約40mくらいか?

アルミ製の針金を2mずつに切断し、半分に折り曲げる。

折り曲げた針金をいくつも束ね、二人掛かりで捻って幹の部分を作る。

針金の折り曲げ部分を根元に、切断面を枝先に見立てて、樹木の形に整える。


次回の研究会

次回は、2月7日(金)に栃木県立美術館を会場として開催し、これまでに完成した、いくつかの「触れるツール」の試作品についての比較・検討を行なう。

 

©2008 ART NET TOCHIGI

第9回〈体験ツール研究会〉の報告

日時2009年2月7日(土曜日)
  1000分~
会場栃木県立美術館 会議室

参加高等学校教員 1名
  美術館学芸員 2名
  合計     3名

 2009(平成21)年2月7日、第9回〈体験ツール研究会〉が栃木県立美術館の会議室を会場に開催されました。
 今回は、第2回〈体験ツール研究会〉において宇都宮美術館から協力を要請されていた「Re+Collectionsプロジェクト」の開催時期が迫り、詳細が決まってきたということで、急遽、予定を変更し、そのプロジェクトにおける作品鑑賞ワークショップ「覚醒セヨ学校美術」のスケジュールと協力内容について、協議を行なうことになりました。




【今回の議題】

あーとネット・とちぎpresents
 鑑賞教育のための指導者研修/作品鑑賞ワークショップ「覚醒セヨ学校美術」について

市内小中学校所蔵作品展〈癒し:学校に眠る美〉の開催に合わせて、展示作品を題材にした鑑賞ワークショップを行なう。

平成20年度の文化庁芸術拠点形成事業に採択されたRe+Collectionsプロジェクト」の一環として開催される。

いわゆる「泰西名画」でなくても、作品を鑑賞する切り口は、さまざまに見出すことができる。

このワークショップでは、絵画と彫刻の「見方・見せ方」について考えながら、学校の授業を想定した鑑賞プログラムを、皆で作り上げていく。

対象は、学校教員、学芸員、学生とする。

開催日時は、3月14日(土)の13時から1545分まで。

会場は「うつのみや表参道スクエア」5階の市民ギャラリー・市民プラザ会議室。

当日の進行は下記のとおり。

時間

内容

場所

1250

受付開始

 

1300

プレ授業1「絵画の鑑賞」

市民ギャラリー

ファシリテーター:
島一嘉さん(栃木県立美術館)
……
対話型による鑑賞と、触れるツールを用いた鑑賞

1330

プレ授業2「彫刻の鑑賞」

市民ギャラリー

ファシリテーター:
有坂隆二さん(さくら清修高等学校)
……
木彫作品の鑑賞

1400

休憩・移動

 

1415

ディスカッション

市民プラザ会議室

プレ授業1、2をもとに、学齢やさまざまな条件を考慮した鑑賞プログラムを皆で作り上げていきます。

1545

(終了)

 

当日の1100分からは、この展覧会を企画した中学生たちにより、ギャラリートークも行なわれる。


次回の研究会

次回は、3月14日(土)に「うつのみや表参道スクエア」5階の市民ギャラリー・市民プラザ会議室で開催される〈鑑賞教育のための指導者研修/作品鑑賞ワークショップ「覚醒セヨ学校美術」〉への参加を以て、この研究会に換える。

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©2008 ART NET TOCHIGI

 

 

10回〈体験ツール研究会〉の報告

日時2009年3月14日(土曜日)
  1300分~1600
会場うつのみや表参道スクエア5階 市民ギャラリーおよび市民プラザ会議室

参加高等学校教員 1名(ファシリテーター)
  中学校教員  2名
  大学研究者  1名
  美術館学芸員 3名(うち1名はファシリテーター)
  中学生    6名
  合計     13

 2009(平成21)年3月14日、第10回〈体験ツール研究会〉が開催されました。
 今回は、うつのみや表参道スクエア5階 市民ギャラリーおよび市民プラザ会議室を会場に、宇都宮美術館の「Re+Collections小中学生による学校所蔵品再発見プロジェクト」への協力事業として実施され、同プロジェクト展覧会会場での作品鑑賞ワークショップとディスカッションを担当しました。

【今回の議題】

あーとネット・とちぎpresents
 作品鑑賞ワークショップ「覚醒セヨ学校美術」の実施

事前には、「鑑賞教育のための指導者研修」を予定していたが、年度末の3月に実施ということもあり、学校教員の参加が少なかったことと、ワークショップに中学生の参加が見込まれていたことなどから、これまでに、「あーとネット・とちぎ」の定期研究会で製作してきた鑑賞ツールを実際に中学生に使用してもらって作品鑑賞につなげ、そこから、今後のツール開発を協議するという内容になった。

絵画の鑑賞ワークショップ-体験ツールを用いて-
13
00分~

展覧会場の出品作品は、全てが学校の所蔵品であることから、「(自分だったら/寄贈者は)どんな作品を学校に飾りたいと思うか」というテーマを、参加者に考えてもらい、その中から6つの意見を書き出していく。

6つの意見をサイコロの目(六面)に割り当てる。


サイコロ

サイコロをふって出た番号の意見に該当する「児童生徒を元気づけるような絵」を展示作品から各自で選び、選んだ理由を発表し合う。

日本画と油彩画の「山」の描き方を比較して、違いを見つけ出す。

体験ツールのサイコロ(べんがらバージョン)に触れてもらい、触覚でも画材の違いを体験する。


サイコロ(べんがらバージョン)

べんがらの粉、千本膠、液状の膠、アラビアゴム、キャンバス、和紙を見せる。

粗さが違う緑青の色面を単眼鏡で観察する。

作家は、どのような気持ちで画材を選ぶのか、また、見る方の側は、さまざまな画材によって、どのような違いを感じ取るのかを考えてみようと、参加者に投げかけて終了。

彫刻の鑑賞ワークショップ「彫刻との出会い方」-ワークシートを用いて-
13
50分~

自分の家や学校に彫刻があるかどうかを問いかける。

記憶の中の彫刻は、どんなもので、どんな場所にあったかを問いかける。

東京ミッドタウンなど、さまざまな場所の彫刻作品を紹介する。

今回の鑑賞活動の対象となる彫刻家・佐伯留守夫の作品が、県内の高校にあることを紹介する、

ワークシートを用いて、展示作品をじっくり鑑賞する。




ワークシートに書き込む

3点の展示作品から1点を選び、主題・イメージ、素材、技法について、よく観察し、思いついたことをどんどん書くように促す。

ワークシートに書いたことを発表してもらう。

佐伯留守夫が用いた素材であるクスの木っ端を丸ノミで削り、木の香りや触感、削った表面の質感を体験してもらう。

木の香りを体験する

周囲の環境にとけこみがちな彫刻作品を、もう一度、再確認し、改めて、出会ってみることを提案して終了。

ディスカッション――絵画と彫刻の鑑賞ワークショップのそれぞれについて
14
40分~

サイコロの目に対応させる意見を、鑑賞者から吸い上げる方法が良かった。

鑑賞についての切り口をファシリテーターが用意する場合は、鑑賞者に合わせたいくつかのステップを設けることもできるのではないか。

ワークシートでは、鑑賞者から作品についての叙述を、どうやって引き出していくか、言葉掛けがむずかしい。

ディスカッション――今後の体験ツールの開発について
14
40分~

さまざまな素材や技法にも対応できる「ツリー」(立体的な樹形図型)の活用を考えていく。

小学生などには、具体的な素材・技法を見せるようにし、年齢が上がるのに合わせて、抽象的・汎用的なものへ変えていくのもよいのではないか。


次回の研究会

とりあえず、新年度になってからも、何らかの名目により、希望者は誰でも参加できる定期的な会合を開催することとする。

その会合において、これまでの研究会で検討されてきた鑑賞ツールの課題についての研究を深めると同時に、平圧式版画用プレス機の製作などについても、検討と実験を重ねるようにする。

 

©2008 ART NET TOCHIGI

 


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