展覧会レポート 開館25周年記念 全館コレクション展「これらの時間についての夢」@宇都宮美術館

2022年12月18日日曜日

【4】レポート

  工事による長期休館を経てリニューアルした宇都宮美術館。開館25周年を記念する「これらの時間についての夢」を見てきましたので、栃木県美の大城がレポートします!

 

・「時間」をテーマにしたコレクション展

 開館25周年を記念して、準備室時代から現在までをたどり、「時間」をキーワードにコレクションを紐解く構成になっています。展示の始まりは開館1回目の展覧会から最新の展覧会までのポスターを一望できるパネルで、25年をめぐる時間旅行へと誘います。

 最初の展示室では、25年前に行われた最初のコレクション展を再現しています。25年前にも訪れたことがある人には、当時を懐かしみ振り返るポイントでもありますが、ただの再現として見せないのがポイントになっています。当時を再現できるということはどういうことかを、美術館が担う役割「保存」という観点から提示します。作品・資料が適切に保存されるからこそ25年の時を経ても再現可能なのです。また、コレクションの核である宇都宮の美術、マグリットやデザイン分野も紹介され、美術館としての収集方針も示されています。

続く展示室でも「時間」という枠組みの中で暦や一人の画家の生涯という小テーマにコレクションが組み込まれています。宇都宮美術館のコレクションの目玉でもあるシャガールで1章構成できるのは流石です。

 県美でも開館50周年記念展「題名のない展覧会」を春に開催したのですが、こちらでは県美でのコレクションの形成をたどる構成にしていたのに対して、宇都宮美術館では「時間」というテーマ展になっていたことで、周年展の中でも扱える作品の幅が広がっていたように思いました。「なるほど!こんな切り口もあったか!」と新鮮な学びがありました。

 

・特別展示:大巻伸嗣、力石咲、髙橋銑

3人の現代作家に「時間」をテーマに作品を制作してもらう特別展示が行われています。(※特別展示は写真撮影可)

各展示室を結ぶホールには、大巻伸嗣の『Echoes-Infinity』の新作が展示されています。色とりどりの円形の作品は、同じく円形のホールにあらわれた魔法陣のようで、外から差す光と自然のモティーフが空間に調和しており、この場所でこそ見る作品と思わせてくれます。現在は結界で囲われていますが、作品の上を歩けるように調整中とのこと。どんな鑑賞体験になるのか楽しみです。


力石咲《自分でつくって、自分でこわす》は巨大な機のような作品と編物のオブジェが展示室に点在します。編まれた糸が作品になって、また一本の糸に戻っていくという時間の流れ、一つひとつの編み目に刻まれた時間、そこに何を見るのか、誰かと話しながら鑑賞したい作品です。ホームページでは設営/展示ムービー(https://youtu.be/rGzdSMtuoh4)も紹介されています。作品は115日にほどかれるそうです(展示室にいた親子が「見たい!」と言っていました)。




髙橋銑《二羽のウサギ》は宇都宮美術館と群馬県立館林美術館で屋外展示されているバリー・フラナガンのウサギの彫刻を、保存と展示という観点から見つめた映像作品。宇都宮美術館の「草の広場」に設置された彫刻は、うつのみや文化の森という環境と調和し、訪れる人に親しみを持って受け入れられている一方で、鑑賞者による作品への接触も多い。館林美術館と対比しながら、保存状態は良好ではないときっぱりと提示されて、学芸員としてはドキリとしてしまいます。作品を物として守ることが必要な一方で、人々に親しまれ記憶されることも保存のためには必要です。作品と美術館の未来について、鑑賞した人はどんな風に受け止めるのか知りたくなりました。


 

・レストランとショップもリニューアル!

宇都宮市民にはおなじみの8010(パレット)がレストランとして入りました。テーブルに置いてあるタブレット端末から注文し、料理ができあがるとブザーが鳴るのでカウンターに取りに行くセルフサービス式です。

ランチのBセット(ソフトドリンクとフルーツサンドが付きます)をいただきました♪お天気が良かったので、フルーツサンドをテイクアウトして外のベンチで食べている人もいました。




文化の森は紅葉も綺麗でお散歩する人で賑わっていました。展示は115日までです。展示が終わるころには葉っぱも枯れ落ちて冬空になるんだなあと「時間」の流れに思いを馳せてみたり…




報告:あーとネット・とちぎ月例会メンバー 大城茉里恵(栃木県立美術館)

 

開館25周年記念 全館コレクション展「これらの時間についての夢」

2022925日[日]~ 2023115日[日]

開館時間:午前930分 ~ 午後5時 (入館は午後430分まで)

休館日:毎週月曜日(祝休日は開館)、1229日[木]~13日[火]・110日[火]

※ただし19日[月・祝]は開館

観覧料:一般1,000円(800円)、大学生・高校生800円(640円)、中学生・小学生              600円(480円)

※( )は20名以上の団体料金

※身体障がい者手帳、療育手帳、精神障がい者保健福祉手帳の交付を受けている方とその介護者(1名)は無料。

※宇都宮市在学または在住の高校生以下は無料。宮っ子の誓いカードまたは学生証をご提示ください。

※毎月第3日曜日(1218日)は「家庭の日」です。高校生以下の方を含むご家族で来館された場合、企画展観覧料が一般・大学生は半額、高校生以下は無料となります。

イベント:「担当学芸員による見どころガイド」2022123日[土]、10日[土]、17日[土]、24日[土] 午後2時~3

QooQ