展覧会レポート 「華厳社 下野の画人たち」@小杉放菴記念日光美術館

2022年10月5日水曜日

【4】レポート

レポート 
華厳社 下野の画人たち@小杉放菴記念日光美術館 

 小杉放菴記念日光美術館で2022年9月17日(土)から11月20日(日)まで開催中の「華厳社 下野の画人たち」展を観覧してきました。 
※展示室内の風景は、美術館の許可を得て撮影しています。
華厳社は、昭和4年(1929)に、東京で活躍していた栃木県ゆかりの日本画家たちによって結成されたグループ展です。 小堀鞆音(佐野)、荒井寛方(氏家)、小杉放庵[放菴](日光)、岡田蘇水(佐野)、関谷雲崖(大田原)、福田浩湖(日光)、小林草悦(今市)、松本姿水(宇都宮)、石川寒巌(黒羽)、武井晃陵(足利/佐野)、大貫銕心[徹心](喜連川)、河内舟人(足利)、荒木月畝(足利)、戸室臨泉(佐野)、大山雅堂[魯牛](足利)。栃木県出身で重要な美術雑誌『美之国』主宰の石川宰三郎と下野新聞社(専務:川村直成)、栃木県人会の田口勝三郎の尽力で組織されたようです。全国各地で県単位の美術団体や県展の前身的な公募展が相次いで設立された大正昭和期の動向も背景にあるようです。

 
【小杉放菴《泉》ほか】 
残念ながら長老格の小堀鞆音が昭和6年に急逝したためか、1年に満たない活動で自然消滅したようですが、これだけ多彩な顔触れがそろったこと、連動して立ち上がったらしい下野美術展が子どもを含む次世代を育成したことを併せて考えると近代栃木の美術の歴史を考える上でとても重要な存在だったようです。
【荒井寛方《竜虎》栃木県立美術館蔵、小堀鞆音《佐野了伯聴平語図》[華厳社出品作]栃木県立美術館蔵、武井晃陵《吉野路之春向》個人蔵ほか】 
もちろん作品もすばらしく、小堀鞆音、荒井寛方、小杉放庵、松本姿水、石川寒巌、大山魯牛らの栃木県立美術館・宇都宮美術館等所蔵の優品が揃い踏みするだけでなく、こんな人・こんな作品があったのか!という驚きの連続でした。
【福田浩湖《祇王寺》善増寺蔵 ほか】 
 特に驚いたのが、唯一の女性画家・荒木月畝です。はじめ古川竹雲(田崎草雲門人)に、上京して荒木寛畝、のち荒木十畝にも学んだ人。荒木というのは小学校教諭だった夫の姓で、月畝も群馬県立高等女学校で9年ほど図画教諭心得として教えているようです。そして夫の死後は再び上京して読画会・日本美術協会、官展にも出品するかなりの実力画家として活躍、女性のお弟子さんも多かったようです。二曲一双の《草花図屏風》は荒木寛畝系の写実をベースにしつつ、大正期らしい噎せるような緑の美しい大作でした。
【荒木月畝《草花図屏風》個人蔵 ほか】
 川合玉堂に学び佐野商業学校(現・松桜高校)などで教えた大貫銕心[徹心]も気になる存在でしたが、県立美術館の大作《霧降の滝》の充実ぶりには目を見張りました。
【大貫銕心[徹心]《霧降の滝》栃木県立美術館蔵、大山雅堂[魯牛]《竹林図》小杉放菴記念日光美術館蔵、石川寒巌《松石不老図》栃木県立美術館蔵】 
 日光出身の小林草悦の「筧」(青龍社展出品作)は現在も日光市立今市小学校の校長室に掛けられている作品とのこと、学校は地域ゆかり作家の作品を永く伝えてくれる場所として重要な役割を果たしています。
【小林草悦《春光》個人蔵。この作品のみ自由に撮影可】

 
【小杉放菴記念日光美術館は日光小学校の跡地に建っているんですね】



【9月下旬、紅葉はまだです。美術館は神橋からすぐです。】 


 県内各地ゆかりの画家が揃い踏みし、かつ知らない画家がたくさんいるという、栃木県内の方にはとってもお得(?)な展覧会です。ぜひ日光の紅葉と共にお楽しみください。 

 取材協力:小杉放菴記念日光美術館 
あーとネット月例会メンバー 末武さとみ(佐野市立吉澤記念美術館) 




開館25周年記念 華厳社 ―下野の画人たち 2022年9月17日[土]~ 11月20日[日] 休館日=毎週月曜日(祝日は開館し、その翌日を休館)
開館時間=午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで) 
主催 公益財団法人小杉放菴記念日光美術館/日光市/日光市教育委員会/下野新聞社 
料金 一般730(650)円、大学生510(460)円、高校生以下は無料 
※( )内は20名以上の団体割引料金 
※身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、日光市公共施設使用料免除カードの交付を受けた方とその付き添いの方1名は無料 
※11月3日[木・祝]「文化の日」は無料開館 
※第3日曜日「家庭の日」(9月18日, 10月16日, 11月20日)は、大学生は無料 
※日光市民は一般300円、大学生200円、高校生以下無料 

 小杉放菴記念日光美術館 
〒321-1431 日光市山内2388-3 
 tel:0288-50-1200 

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