レポート 栃木県美におけるオンライン鑑賞教育の試み

2021年11月21日日曜日

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1回のレポートからずいぶんと時間をあけてしまいました。第2回となる今回は、栃木県立美術館で行った「オンライン鑑賞教育の試み」をご紹介したいと思います。


コロナ禍で休館が続き、学校教育もオンライン化が進むなか、団体観覧等で訪れていた小中学生にとっては美術に触れる機会が減ってしまっています。そのような状況を鑑み、栃木県美普及班では遠隔での鑑賞教育について模索しています。その名も「みつめて、コレクション!」。第1弾として、栃木県美でも人気の作品のひとつ、ターナー《風景、タンバリンをもつ女》を紹介する動画を制作しました。

 

今回ご紹介するのは、清水登之《パリ夜街》を取り上げた第2弾の試みです。動画を観るだけではなく、オンラインでも子どもたちが能動的に動くことのできる形式はないか…と考え、たどり着いたのは、学校で使われているタブレットを用いたゲーム形式の鑑賞教育です。

「あつまれ!パリ夜街」と名付けたこのツールは、ジェスチャーや遠近感などを手掛かりに、右側の枠内にいる人物を左の絵のなかにパズルのように配置していきます。ゲーム感覚で楽しみながら、絵をじっくり観察することができるように工夫をしました。完成後には、自分なりの《パリ夜街》について「どうしてそこに人物を置いたのか」「どんなストーリーなのか」を発表してもらいます。最後に、実際の作品を用いた作品・作家解説を行い、さらに理解を深めていきます。

「あつまれ!パリ夜街」はOffice PowerPointで作成しているため(一部画像加工はPhotoshopillustratorを使用)、PowerPointが入っている端末があればどこでも遊ぶことが出来ます。各種アプリのダウンロードに制限のある学校現場でも、安心して使っていただくことが出来ます。

 

 こちらのテストプレイに、小山市立豊田中学校1年生の皆さんが協力してくれました。

皆さん自由な発想で、素敵なパリの街をつくっていただきました。発表してくれた生徒さんのお話を聞くと、人の大きさや視線の動き、窓の位置など、絵をよく観察してくれたことがわかります。最後には、実際に展示されている作品を映しながら、学芸員が作品解説を行いました。

ご協力いただいた生徒および教員の皆さんを対象に、実施後にアンケートを行いました。「楽しかった」と答えてくれた生徒は97%、「実際に県立美術館に行ってみたい」と答えてくれた生徒も69にのぼりました。小山からやや距離のある県立美術館は、豊田中の皆さんにはなかなか馴染みのない場所だったかもしれませんが、こうして興味を持ってくれた生徒さんが多かったことはうれしい限りです。

また、教員の皆さんからは、映像の見やすさや質問の投げかけについてのアドバイスをいただくことができ、本格導入に向けた課題も見つけることが出来ました。その一方で、オンラインならではともいえる「複数校での同時開催」といったようなご提案もいただきました。異なる市町村間の交流にもつながる、おもしろい試みとなるかもしれません。

 

今回は、映像越しではありましたが、実際の作品を展示室から生中継でお見せしました。しかし、同じ作品が常に展示されているわけではなく、こうした形態が難しいこともあります。そこで、展示期間外にも対応できるよう、同じ内容の動画教材も作成しました。

こちらも、順次テストプレイを重ねていければと思います。


 以上、今回は県立美術館での新たな鑑賞教育の試みについてご紹介しました。こうした試みにご興味のある先生がいらっしゃいましたら、ぜひ県立美術館までご連絡ください。


あーとネット月例会メンバー 武関彩瑛(栃木県立美術館)


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