まず、大田原市芸術文化研究所とは、栃木県北部にある大田原市で、廃校になった中学校(両郷中学校)の校舎を再生して、作家のアトリエや展示空間として、2014年から再活用しているものです。なかなか珍しい事例ですが、同研究所所長の日原公大氏によると、「那須野が原国際芸術シンポジウムを行っていく中で、シンポジウムのセミナールームが欲しいと大田原市に働きかけていたこと、同市の廃校の有効活用をしたいという希望が重なり、このような施設が誕生した。」とのこと。廃校の再活用は全国的な動向ですが、それをコスパが決して良いとは言えない美術分野に用いたのは、長年の実績があったためだと分かりました。現在、同研究所では、現在3名の職員(日原氏ほか2名いずれもアーティスト)が、勤務し、施設の貸出から、レジデンス事業の運営、展覧会の準備まであたっているそうです。
さて、そんな経緯でオープンした大田原市芸術文化研究所で行われている第7回ゲタ箱展と第11回芸術文化研究所研究員展。7回目となるゲタ箱展は、その名の通り、元中学校という環境を活かして、国内外の現役作家118名の作品を展示しています。まず、面白いのがゲタ箱という誰しも馴染みのあるものを展示空間としていることです。味わいのある空間に小さな作品が並ぶ様子は、ボックスアートがたくさんあるかのように、様々な作家の世界観がギュッとつまった空間が格子状に並ぶ様は圧巻です。加えて、興味深いのが、作品を自由に触ってよいことです。気になった作品を手に取れるのは、他ではなかなかできない経験で、私も気になった作品を手にとって鑑賞しました。
【宝箱になったゲタ箱】 |
【研究員展 五月女かおる 《うろつく犬-the dog series-》】 |
同時開催されている第11回芸術文化研究所研究員展では、同研究所所長の日原氏をはじめとした作家の作品が天井の高い廊下を使って、ずらりと並びます。ゲタ箱展の極小なショーケースで小品に目を凝らした後だけに、開放感を感じながら、大き目の作品を周遊して見ることがとても心地よく感じました。
作品コレクションのチャンスとしても、美術館とは異なる芸術支援のケーススタディとしても、ゲタ箱展と芸術文化研究所研究員展はとても興味深い試みで、時間がたつのも忘れ、すっかり満喫してきました。会期は、6月30日まで。是非、行ってみてください。
【会場で無料配布のカタログ 太っ腹です!】 |
【中は、出品作品がカラーでずらり。】 |
取材協力:大田原市芸術文化研究所
あーとネット月例会メンバー 小堀修司(宇都宮美術館)
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